化学兵器の「引渡し済み」を証明

ジャーナリストの水間改憲氏は山形県にある全国抑留者補償協議会(全抑協)のシベリア史料館で六百冊にも及ぶ「旧日本軍兵器引継書」を発見した。これは平成七年に死去した斎藤六郎元全抑協会長が一九九〇年代に、ロシア各地の公文書館等から、合法的に日本に持ち帰ったもので、段ボール二十四籍の中で埃まみれで眠っていた。内容は中国のいう遺棄化学兵器問題に決着を付ける資料である。
同問題の仕掛け人もやはり朝日新聞で、昭和五十九年六月十四日付、一面トップ「イペリットなどの毒ガス、日本が使っていた」の報道である。同二十二日付社会面で、中国が旧日本軍の毒ガス使用を初めて報道したことを記事にしている。その中で「朝日新聞の報道によると…」と新華社の記事を紹介し、自らが仕掛け人であることを自白している。中国が非公式に遺棄化学兵器の解決を要求してきたのは、平成二年、海部内閣時代である。
抑も、日本の中国に対する戦争賠償は「日中共同宣言」によって全て解決済みである。平成七年に化学兵器禁止条約に批准したが、この条約は「自国が所有若しくは占有する化学兵器」の廃棄を義務付けたものであるが、中国の強い主張により「他の締約国の領域内に遺棄した化学兵器」の廃棄義務が付け加えられた。
平成十年四月十日の衆議院外務委員会において、当時の民主党の松沢成文委員(現神奈川県知事)と阿南惟茂外務省アジア局長の質疑応答によると、阿南は「中国は化学兵器のみを旧日本軍に遺棄させ、残りの武器のみを接収したと判断する」と、中国寄りの見解を示している。
平成十一年、日中共同宣言の無力化に繋がる左記のような「中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」を締結した。
(一)中国国内に大量の旧日本軍の遺棄化学兵器が存在することを確認した。今後確認される化学兵器も含めて、日本は化学兵器禁止条約に従って遺棄締約国として負っている義務を誠実に履行する。
(二)日本は廃棄に必要な全ての資産、技術、専門家、施設及び全ての資源を提供する。
(三)日本は中国の法律を遵守し、中国領土の生態環境に汚染を齎さない。
(四)廃棄の過程で事故が発生した場合は、日本側は必要な補償をする−−−など。
この覚書は全て中国に有利であるばかりで、「旧日本軍が遺棄したと認められる場合の」という、日本側として最低限入れるべき乗件も入っていない。この締結を待っていたかのように、中国各地で遺棄化学兵器の被害が報道されるようになった。
日本政府は平成十二年以降、旧日本軍遺棄化学兵器処理費用に九百七十億円を投じている。阿南アジア局長は「人民解放軍に支払った額は実費」といっているが、平成十七年十月三十一日付の産経新聞によると、宿舎は2LDKでプール付きの豪華なものであり、森林伐採で中国が要求した額は「白樺一本百?」だったが、国際相場は二、三?とのこと。平成十八年一月三日付の産経新聞によると、化学兵器処理に必要な変電所は数千?・?だが、五万−七万?・?の建設やヘリポートの建設を要求しているとのこと。中国の要求通り処理費用を拠出すると、一兆円を越えると言われている。
これは、中国へのODAが終了しても、金を引き出す「政治カード」として中国政府のシナリオに基づき日本の外務省との「日中合作」で作られたものといえる。
昭和二十年当時の化学兵器に関する国際条約を見ると「使用」を禁じたのであり「保有」は認めていた。当時、主要国は化学兵器を所有していた。ハーグ宣言では敵が化学兵器を使用した場合には、化学兵器による報復は禁止していなかったのである。旧日本軍が化学兵器を所有していたことは何ら恥ずる必要はないことなのだ。
極東ソビエト軍総司令官・ワシレンスキーはスターリンヘ「八月十九日、満洲における全ての前線で、日本軍の抵抗が中止され、敵軍の武装解除に着手した」と報告している。元関東軍第二幹部教育隊の方からの証言では、「九月初旬頃、ソ連軍の命令により、数日間、吉林省敦化付近の大石橋の湖沼へガス弾の放棄作業を行った」という。
中国は一九五〇年代初め、敦化地区の大橋郷等で大量の化学砲弾が発見され、現地政府が一九五一年から一九六三年に掛けて、人の住まないハルバ嶺の一角の山腹に埋めたと言っている。
今回、確認した支那派遣軍の旧日本軍への引継書は約六百冊で、全てに年月日、引継場所、授者(日本軍)と受者(中国軍)の身分、著名、捺印がある。中国人の署名総数は数千名となる。受者の著名は遺棄化学兵器も一緒に接収したことの同意文書である。文書によると、化学兵器に含まれる発煙弾、発煙筒が引き継がれており、中国及び外務省が言う「化学兵器の引き継ぎに同意していない」は、全く嘘であると証明出来る。
平成十八年二月二十四日、衆院内閣委員会で民主党の泉健太衆院議員の「武器の引き渡し目録等の資料が出てきた場合、(処理費用の)請求が中国やソ連に及ぶことがあるか」との質問に、内閣府の高松明遺棄化学兵器処理担当室長は「その場合は、基本的な枠組みが変わってくる」と答弁している。今、我国が対処すべき事は、遺棄化学兵器処理費の無期限凍結である。
遺棄化学兵器処理の真相を暴いた水間政憲氏の話
国民が待ち望んでいたであろう大量の決定的公文書を発見したにも拘わらず、日本のメディアは一切報道していない。
五月十二日には、内閣委員会でも戸井田徹衆院議員が質問して、安倍官房長官が「大変重要な史料なので調査します」と答弁したことも報道していない。この事実は拉致被害者の存在を無視し続けてきたメディアと重複するのだ。
日本のメディアは既に中国の言論統制下に入ってしまったためであろうか。一方」ネチズンによって、ネット上で大々的に配信されているとのことである。拉致被害者を無視した当時と違うのは、ネットで情報が全国に配信される時代になっていることだ。この日本の閉塞状態を打ち破るのは、ネット情報なのかも知れない。今、『正論』の七月号のスクープ第二段を執筆しているので期待して欲しい。
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